フリーソフトウェア世界では Debian パッケージ以外のソフトウェアパッケージも使われています。一番の競争相手は Red Hat Linux ディストリビューションとその派生物が使う RPM フォーマットです。Red Hat は非常に人気のある商用ディストリビューションです。そのため一般に、サードパーティが提供するソフトウェアは Debian パッケージではなく RPM パッケージで用意されます。
この場合、Debian では RPM パッケージを取り扱うプログラム rpm
がパッケージとして用意されており、Debian では RPM パッケージフォーマットを使うことができることを知るべきです。しかしながら、パッケージから情報を引き出したり、整合性を検証するための操作は制限されていることに注意してください。実のところ、RPM を Debian システムにインストールするために rpm
を使うのは合理的ではありません; RPM はネイティブソフトウェア (dpkg
など) とは異なる自分自身のデータベースを使います。このため、2 つのパッケージ化システムを安定に共存させることを保証するのは不可能です。
他方で、alien ユーティリティは RPM パッケージを Debian パッケージに変換したりその逆を行うことができます。
$
fakeroot alien --to-deb phpMyAdmin-2.0.5-2.noarch.rpm
phpmyadmin_2.0.5-2_all.deb generated
$
ls -s phpmyadmin_2.0.5-2_all.deb
64 phpmyadmin_2.0.5-2_all.deb
変換作業が極めて単純だということがわかるでしょう。しかしながら、生成されたパッケージには依存関係の情報が含まれないことを知らなければいけません。なぜなら、2 つのパッケージフォーマットの依存関係の間に系統的な対応関係が無いからです。管理者は変換されたパッケージが正しく動くことを手作業で保証しなければいけません。そのため、生成された Debian パッケージを使うのは可能な限り避けるべきです。幸いなことに、Debian が用意しているソフトウェアパッケージの数は全てのディストリビューションの中で最も多く、探しているものは何でも用意されていそうに見えます。
alien
コマンドの man ページを見ると、このプログラムが他のパッケージフォーマット、特に (単純な tar.gz
アーカイブで作られている) Slackware ディストリビューションで使われているフォーマット、を取り扱うことも可能なことに気が付くでしょう。
dpkg
ツールを使って配置されたソフトウェアの安定性は Debian の名声に寄与しています。次の章で説明する APT ツール集はこの長所を引き継いで、さらに、管理者が不可欠だが難しい作業であるパッケージの状態管理をしなくても済むようにしました。